化学業界の低迷は長引く見通し、ランクセスの業績予測引き下げで悲観強まる

化学業界の業績が下半期に回復するとした市場の期待感がにわかに消え去った。きっかけとなったのは独大手ランクセスの大幅な業績予測引き下げだ。あらゆる産業に製品を供給する化学業界は景気動向を先取りすることから、経済の先行き懸念が強まっている。

ランクセスは19日夜に発表した声明で、2023年12月期の営業利益(EBITDA、特別要因を除く)を従来予測の「8億5,000万~9億5,000万ユーロ」から「6億~6億5,000万ユーロ」へと引き下げた。需要の低迷と顧客の在庫調整が第2四半期も継続したうえ、下半期に市況が改善する見通しも立たないためだ。特に建設、電機産業で引き合いが弱い。

これまでは下半期に需要が回復すると予想していた。だが、主要市場の中国はゼロコロナ政策の解除後も不振が続く。不動産価格の下落や消費の低迷、西側諸国との地政学的な対立の強まりが響いている。

他の主要市場も状況は厳しい。インフレ抑制法(IRA)の効果で期待されていた米国の需要増はこれまでのところ起きていない。

足元の欧州はエネルギー価格の高止まりが生産の足かせとなっている。マティアス・ツァッヒェルト社長は「全世界的に需要が低迷する時期にドイツは産業立地拠点として競争力を保てない」と危機感を表明した。

ランクセスの声明発表を受け、同社の株価は翌20日に急落。化学業界全体への懸念から競合エボニック、BASFもつれ安となった。

主要顧客産業の自動車では現在、工場稼働率が以前に比べ高まっている。半導体の供給不足で滞っていたい生産がようやく回復してきたためだ。だが、景気の先行き不安を受け新規受注は振るわないことから、車部品の需要は今後、落ち込む可能性が高い。『フランクフルター・アルゲマイネ』紙によると、樹脂部品業界では、エネルギー・原料価格の高騰を受けて弱まっていた自動車メーカーの値下げ圧力が再び強まってきたとの声が出ているという。

上部へスクロール