独経済・気候省は23日、太陽電池産業向けに補助金を交付する方針を発表した。米国のインフレ抑制法(IRA)を受け、ドイツでの投資を見合わせる動きが出ていることに対応。助成措置を通して国内生産を促進する意向だ。ロベルト・ハーベック経済・気候相は「トランスフォーメーション技術の中心的な分野で独・欧州は独自の生産能力を持つ必要がある。これは単に経済的な理性の問題であるばかりでなく、経済安全保障の問題でもある」と述べた。
ドイツでの生産ないし生産能力拡大を計画するソーラー産業の企業向けに助成を行う。対象となるのは太陽光発電モジュールないしその中核部品を作るメーカー、およびその原料の獲得、加工、リサイクルを行う企業。支援対象を重要プロジェクト数件に絞る意向を示している。関心のある企業はその旨と計画の概要を経済・気候省に電子メール( Buero-IVE5@bmwk.bund.de )で伝える必要がある。期限は8月15日。
ドイツにはかつて、Qセルズ、ソーラーワールトといった太陽電池の有力メーカーがあった。だが、価格競争で中国勢に敗北し、両社とも経営破たん。同国の太陽電池産業は18年までに実質的に消滅した。スイスの機械メーカー、マイヤー・ブルガー・テクノロジーがソーラーワールドの旧工場などを取得し20年にドイツで生産を開始したものの、世界的にみると規模は小さい。
同社はこれまで独事業の拡大に意欲を示してきた。だが、IRAの成立を受けて方針を転換。今後は工場を米国に設置し、ドイツでは見合わせる意向を示している。
経済・気候省はこれに対抗するため今回、ドイツで生産ないし生産能力の拡大を行うメーカーに対し米国など第3国(欧州経済領域=EEA域外の国)で得られるのと同額の補助金を交付する意向を表明した。欧州連合(EU)の欧州委員会がIRAへの対抗策として公的補助規則を一時的に緩和する「暫定危機対応・移行枠組み(TCTF)」を3月に打ち出したことから、この枠組みを利用して助成を行う意向だ。風力発電設備、電解槽、大型ヒートポンプの分野でも同様の措置を検討している。