ドイツのバイオテクノロジー企業が2022年に調達した資金の総額は前年比38%減の8億1,200万ユーロと大きく落ち込んだことが、監査法人大手のアーンスト・アンド・ヤング(EY)が作成した2023年版『ドイツ・バイオテクノロジー・レポート』で分かった。減少は2年連続。過去最高だった20年(30億4,600万ユーロ)に比べると73%少ない。コロナ禍に伴うブームが一服し、正常化したことが背景にある。ロシアのウクライナ侵攻や株式市場の低迷、金利上昇も響いた。
同レポートでは資金調達源をベンチャーキャピタル、新規株式公開(IPO)、フォローオン、転換社債の4つに分類している。22年はベンチャーキャピタルが48%減の3億8,900万ユーロ、フォローオンが52%減の4億1,800万ユーロと大きく減少。転換社債は1億3,900万ユーロから600万ユーロへと激減した。IPOは1件もなく0ユーロとなった。前年は4件で計6億6,700万ユーロに上っていた。
上場するバイオ企業の時価総額は22年末時点で527億ユーロとなり、前年同日を38%下回った。ダントツで規模が大きいビオンテックが38%減の342億ユーロに縮小。2位キアゲン(4%減の106億ユーロ)、3位エボテック(64%減の27億ユーロ)、5位キュアヴァク(81%減の11億ユーロ)も振るわなかった。4位フォーマイコンは101%増の13億ユーロと大幅に伸びている。
バイオ企業が22年に締結した協業契約で獲得できる売上高(前払金とマイルストーンの合計)は前年比320%増の最大142億4,000万ユーロとなり、過去最高を更新した。5億ユーロ超の大型取引が6件と多かったことが大きい。取引件数自体は4件減の44件だった。
バイオ業界の企業数は横ばいの750社で、そのうち22年の設立は23社だった。分野別では医薬品開発が61%とダントツで多く、これにサービスと産業バイオテクノロジーが各13%、食品/ノベルフードが9%で続いた。バイオインフォマティクス分野は人工知能(AI)を活用するタンパク質工学のエグザザイム(Exazyme)1社にとどまった。
新設23社のうち43%はバイエルン州に拠点を置いている。バーデン・ヴュルテンベルク州も22%と多く、ドイツ南部の両州だけで全体の65%を占めた。
独バイオ企業が開発中の医薬品で臨床試験が行われているものは145件に上った。段階別ではフェーズ1が51件、フェーズ2が77件、フェーズ3が17件となっている。分野別ではがんが56%と過半数を占めた。2位は感染症で12%、3位は自己免疫疾患で10%だった。
バイオ業界の売上高は251億4,000万ユーロで、前年を3%下回った。コロナ禍が下火になりワクチン需要が激減したことを踏まえると、減少幅は小さい。20年実績(64億9,000万ユーロ)に比べると3.9倍に達している。研究開発費は前年比1%増の38億ユーロ、業界従事者数は10%増の4万7,398人だった。