欧州連合(EU)加盟国は12日、議長国スウェーデンの首都ストックホルムで非公式の外相会合を開き、対中政策を見直す必要があるとの認識で一致した。中国の軍事的脅威が高まるなか、同国への関与を維持しながら、戦略的に重要な物質や技術面などで過度な依存を軽減していく方針で大筋合意した。
EUはこれまで経済や気候変動対策などの分野で中国をパートナーと位置づける一方、権威主義的な政策を推進する習近平政権に対する警戒を強め、体制上のライバルとみなしている。
ボレル外交安全保障上級代表は会議後の記者会見で、「中国に対する戦略を再調整するための基本路線について合意した」と発言。経済面ではエネルギー分野でロシアへの依存度を高めた反省に立ち、中国への依存が高まっている重要鉱物や太陽光電池などの分野でリスクを減らす「デリスキング」を進める考えを示した。一方、安全保障面ではウクライナへの侵攻を続けるロシアに接近する中国の動きを批判。中国に対し、国連安保常任理事国としてロシアにウクライナからの撤退を促すよう求めると述べた。
外相会合に先立ち、欧州対外行動庁(EEAS)は各国政府に7ページから成る対中政策の見直し案を送付していた。文書の内容は公表されていないが、英『フィナンシャル・タイムズ』によると、「中国問題はロシア問題よりもはるかに複雑」「中国の野望は中国中心の新世界秩序を構築することにあり、仮にロシアが敗北したとしても中国が脇道に逸れることはなく、地政学的利点を獲得しうるだろう」といった分析が盛り込まれているもよう。EUは6月の首脳会議で対中戦略のあり方について立場を表明する見通しで、2019年の政策文書「EU-中国の戦略的展望」よりさらに踏み込んだ対中脅威認識が示される可能性がある。