ドイツ人が現在、最も懸念していることは物価高騰に伴う生活費の増加であることが、保険大手R+Vの市民アンケート調査で分かった。心配事の上位は生計に直接、間接的にかかわる事柄が占めている。コロナ禍が終了していないところにロシアのウクライナ侵略、高インフレという新たなリスク要因が加わったことから、不安指数は前年を6ポイント上回る42%となり、4年来の高水準を記録した。
R+Vはドイツ語を話す14歳以上を対象に1992年から毎年、インタビュー形式のアンケート調査を実施し、『ドイツ人の不安』というレポートをまとめている。今回は6月13日から8月23日にかけて実施した。
「生活費の増加」に不安を感じている人は67%となり、前年を17ポイント上回った。所得の大小や年齢を問わずあらゆる社会層で不安を持つ人が多い。生活に必要不可欠なエネルギーと食料品の価格が高騰していることが大きい。
心配事の2位は「住居費が負担限度を超える」で58%、3位は「経済状況のさらなる悪化」で57%、4位は新型コロナ対策で膨らんだ財政支出を相殺するため「増税ないし公的給付の削減が行われる」で52%、5位は「欧州連合(EU)債務危機に伴う納税者負担の増加」で51%に上った。トップ5を家計に影響する経済問題が占めている。
「破局的な自然災害・極端な天候」は前年の41%から49%に増え、6位に付けた。今夏の猛暑・渇水、山火事などの多発が反映されている。これらの問題の背景には地球温暖化があることから、「気候変動」との回答も6ポイント増の46%へと増えた。
「戦争」は42%で12位にとどまったものの、前年からは26ポイントも上昇した。ロシアのウクライナ進攻を受け、ドイツが戦争に巻き込まれるリスクが急速に現実味を帯びてきたことが大きい。
市民が不安を感じる事柄はその時々の情勢を強く反映している。心配事の1位となった事柄を時系列でみると、2011~15年の5年間は「EU債務危機に伴う納税者負担」が続いた。リーマンショックに端を発するギリシャやイタリアなどの財政危機とその解決策をめぐる欧州レベルの激しい論争が背景にある。16年と17年はイスラムテロの多発を受け「テロ」が1位となった。昨年は巨額のコロナ禍対策費計上を受けて「増税ないし公的給付の削減が行われる」が最大の心配事だった。