ドイツ金属業界(自動車・電機・機械など)では2018年の協定で、年次有給休暇を上乗せして取得する権利が被用者に認められた。家庭生活と仕事を両立しやすくするためだ。この権利を巡る係争で、最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が2月23日に判決(訴訟番号:10 AZR 99/21)を下したので、取り上げてみる。
同協定では、各被用者に19年から400ユーロと月収の27.5%に相当する額を年に1度支給することが取り決められた。子どもや要介護家族がいる被用者とシフト勤務の被用者については、月収の27.5%相当額を取得する代わりに、年8日間の追加有給休暇を取る権利が認められている(金銭受け取りか有給取得かの選択権がある)。
裁判は同協定が適用される企業の被用者が雇用主を相手取って起こしたもの。原告は19年、月収の27.5%相当額を取得せず、8日間の追加有給休暇を取得することを選択した。その期間のうち2日間は病気(医師が発行する就労不能証明書を取得)で有効活用できなかったことから、2日分を別の日に取得することを雇用主に要求。これが拒否されたため、提訴した。
原告は二審で勝訴。最終審のBAGでも判決は覆らなかった。判決理由でBAGの裁判官は、労使協定の解釈に基づき、病気で有効活用できなかった追加有給休暇日については取得権が満たされておらず、基本的に失効しないと言い渡した。
長期の病気など個人的な理由で追加有給休暇を消化できない場合は取得権が失効することになるが、その場合は月収の27.5%相当額を代替取得できるとの判断も示した。