年に6週間以上、病気休業する社員がいる場合、雇用主は本人の同意を得たうえでどうすれば職場に復帰できるかを検討しなければならない。これは第Ⅸ社会法典(SGB)84条2項の第1文に記されたルールで、「職場復帰マネジメント(Betriebliches Eingliederungsmanagement=BEM=)」と呼ばれる。このルールに絡む係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が昨年11月に判決(訴訟番号:2 AZR 138/21)を下したので、取り上げてみる。
裁判は工場勤務の生産助手が雇用主を相手取って起こしたもの。原告は病欠が多く、その日数は2017年が40日、18年が61日、19年が103日に上った。
被告雇用主はBEMを行うため19年3月5日、上司などを交えて原告と面談したが、原告はその直後から再び長期病欠した。被告はこれを受け、20年2月26日付の文書で解雇予告期間を設定した通常解雇を通告。原告はこれを不当として提訴した。
BAGは昨年11月18日の判決で原告勝訴を言い渡した。判決理由で裁判官は、BEMでは病気の原因を探ったうえで職場の設備の見直しや配置換えなど雇用を継続させるために必要な措置を見つけ出さなければならないと指摘。また、BEMの効果がなかった場合は新たなBEMを実施しなければならないと強調したうえで、そうした努力をせず原告に適した職場はないとして被告が原告に解雇を通告したことは不適切で社会的に正当でないと言い渡した。