超過勤務時間の計算で有給休暇を加味しないのは違法

所定の勤務時間を超えて被用者が超過勤務を行った場合、労使協定や労働契約に基づき通常、手当(割増賃金)が支給される。欧州連合(EU)司法裁判所(ECJ)はこのほど、ドイツの人材派遣業界の労使協定に定められた超過勤務手当規定はEU法違反の可能性があるとの判決(訴訟番号:C‑514/20)を下した。今回はこれを取り上げてみる。

裁判は同国の人材派遣会社コッホ・ペルゾナールディーンストライスツゥンゲンを相手取って被用者が起こしたもの。人材派遣業界の労使協定では月の勤務日数が23日で合計の勤務時間が184時間を超えた分について25%の割増賃金を支給することが取り決められている。

勤務日数が月23日となっている原告は2017年8月に計13日勤務し、残り10日は有給休暇を取得した。13日間の勤務時間は計121.75時間だった。

原告は有給休暇を考慮して計算すれば超過勤務したことになるとして、割増賃金の支給を要求。これが拒否されたことから提訴した。

ドイツの最高裁である連邦労働裁判所(BAG)はこの係争がEU法に絡んでいると判断。派遣業界協定の超過勤務手当規定がEUの基本権憲章と労働時間指令(2003/88/EC)に抵触していないかどうかについてECJの判断を仰いだ。

ECJは13日の判決で、被用者の有給休暇取得権はEUの社会権で特に重要な原則であり、逸脱は許容されないと指摘。独派遣業界協定の超過勤務手当規定は、同手当を受給するために被用者が有給休暇取得権の行使を見合わせることにつながる可能性があると指摘。EU法で保障された有給休暇の請求権に抵触している可能性があるとの判断を示した。

BAGはECJの判断に基づいて審理を行い、判決を下す。同規定は違法との判断を下すと目されている。

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