配達員への自転車・スマホ支給は義務、フードデリバリーの敗訴確定

インターネットで出前を仲介するフードデリバリーの配達員に対し雇用主は業務で必要な自転車とスマートフォンを支給しなければならないのかを巡る裁判を7月7日号の本コラムで紹介した。この裁判で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が10日に判決(訴訟番号: 5 AZR 334/21)を下したので、改めて取り上げてみる。

裁判はフードデリバリー大手リーファランドの配達員(被用者)が同社を相手取って起こしたもの。同社の配達員は備品のデポジット金として100ユーロの支払いを義務付けられていながら、配達業務に必要な自転車とスマートフォンはプライベートなものを使わなければならない。自転車については勤務1時間につき修理代25セントの権利が与えられるものの、修理が可能な自転車屋は被告の契約先に限定される。これらの決まりは雇用主が作成した普通契約約款(Allgemeine Geschaeftsbedingungen=AGB)に定められている。

原告はこれを不当として提訴し、スマホと自転車の支給を要求した。原告は一審で敗訴したものの、二審のフランクフルト州労裁で逆転勝訴。最終審のBAGは二審判決を支持した。判決理由でBAGの裁判官は、普通契約約款の作成使用者(ここでは被告リーファランド)が信義義務に反して契約相手(原告)に不利な取り決めを行った場合、その取り決めは無効になるとした民法典(BGB)307条1項の規定と、法規定の基本思想に合致しない普通契約約款の規定は契約相手に不利な取り決めとみなされるとした同条2項1の規定を指摘。そのうえで、被用者が業務の遂行に必要な労働手段は雇用主が提供するという労働法の基本思想を挙げ、配達員には業務の遂行に必要不可欠な自転車とスマホを雇用主に請求する権利があると言い渡した。

また、労働手段は雇用主が提供するという労働法の基本思想から逸脱する取り決めを労働契約で結ぶことは可能だとしながらも、そうした取り決めを普通契約約款で結ぶ場合は、適度な額の金銭を被用者に支給しなければならないと指摘。被告の普通契約約款ではスマホ代の金銭補償が全く記されていないうえ、自転車でも◇修理代が業務での実際の走行距離でなく走行距離との関連が間接的な勤務時間に基づいて支給されており不適切だ◇修理を依頼できる自転車屋を自由に選べないのも問題だ――として同普通契約約款の違法性を指摘。原告は自転車とスマホの支給を被告に請求できるとの判断を示した。

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