マスク着用を頑なに拒否、解雇は妥当

新型コロナウイルスの感染拡大を防止するために勤務中のマスク着用を雇用主が義務付けているにもかかわらず、被用者が受け入れを頑なに拒否した場合は即時解雇できる。そんな判断をケルン労働裁判所が6月の判決(訴訟番号:12 Ca 450/21)で示したので、取り上げてみる。

裁判は外勤のサービスエンジニアが雇用主を相手取って起こしたもの。同社は新型コロナの流行を受け、派遣先でのマスク着用をサービスエンジニア全員に義務付けた。原告はこれを受け昨年6月、医師の診断書を提出した。診断書には「新型コロナウイルス抑止措置政令に記された非医療用マスクないしそれに類する口鼻を覆うものの着用をこの被用者に要求することは医学的な理由からできない」と記されていた。

被告は「医学的理由」が具体的に明記されていなかったことからマスク着用義務を免除しなかったものの、原告が用いる医療用マスクの費用については負担することにした。また、マスク着用義務の順守を改めて指示した。

原告はそれにもかかわらず外勤を拒否し続けたことから、被告は原告に警告処分を出した。これに対し原告はマスクを着用せずに行える業務しか引き受けない意向を表明。マスク着用のサービスエンジニアを派遣するよう求めた顧客のもとへ出向くことを12月に拒否したことから、即時解雇を通告された。

原告はこれを不当として提訴したものの、一審のケルン労裁は訴えを棄却した。判決理由で裁判官はまず、感染状況を踏まえてマスク着用を義務付けた被告の措置は妥当であるにもかかわらず、原告はその受け入れを頑なに拒否し続けたと指摘。そのうえで、6月に発行された医師の診断書は◇12月時点の病状を示すものではない◇マスクを着用できない医学的な理由が具体的に記されていない――ため、無効だと言い渡した。また、産業医による診察を被告が提案したにもかかわらず原告は受け入れなかったことなどを踏まえ、原告が主張する「医学的理由」は信憑性に欠けるとの判断も示した。

裁判官は控訴を認めており、判決は確定していない。

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