「遠隔地への異動の代わりに在宅勤務を」、被用者に請求権はあるか

コロナ禍の発生を受けて在宅勤務の意義が認知されてきた。うまく活用すれば労使ともにメリットがあることが明らかになったためだが、被用者に在宅勤務の請求権を認める恒久的な法律は現時点で存在しない。それでも場合によっては自宅での勤務を請求できることがあるのだろうか。この問題に絡んだ係争で、ベルリン・ブランデンブルク州労働裁判所が3月に判決(訴訟番号:4 Sa 1243/20)を下したので、ここで取り上げてみる。

裁判は銀行員が勤務先を相手取って起こしたもの。被告は組織再編の一環で原告が長年、勤務してきたベルリン支店の閉鎖を決定した。これに伴い原告に対し、労働条件を変更するために従来の労働契約を解除し新たな契約を結ぶ「変更解約(Aenderungskuendigung)」を提案した。

更新契約では新たな勤務地が数百キロメートル離れたヴッパータールとなっていたことから、原告は受け入れを拒否。自宅ですべての業務を行うことができるとして、在宅勤務を認めるよう要求した。これが拒否されたため、提訴した。

一審のベルリン労働裁判所は昨年8月の判決で、原告勝訴を言い渡した。在宅勤務を認めず、ヴッパータールへの転勤を受け入れなければ解雇するという被告の姿勢を「時代にそぐわず恣意的」と判断したのである。

これに対し二審のベルリン・ブランデンブルク州労裁は逆転敗訴判決を下した。判決理由で裁判官は、組織再編は企業の意思決定(unternehmerische Entscheidung)に属する事案であり、裁判の審理対象とはならないと指摘。原告の在宅勤務を認めるかどうかは被告の自由だとの判断を示した。最高裁の連邦労働裁判所(BAG)への上告は認めなかった。

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