個人データのコピー請求で最高裁判決

個人データの管理者は請求があった場合、そのコピーをデータ主体に提供しなければならない。これは欧州連合(EU)一般データ保護規則(GDPR)15条3項に定められたルールである。被用者はこの権利に基づき、自分自身のデータのコピーを雇用主に請求できる。このルールに絡んだ係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が4月に判決(訴訟番号:2 AZR 342/20)を下したので、ここで取り上げてみる。

裁判は企業法務を専門とする弁護士が2019年1月1~31日の1カ月間、仕事をしていた元勤務先を相手取って起こしたもの。原告は退職後、(1)被告が持つ原告の個人データの開示(2)勤務期間中に原告が送受信したすべてのメールと、原告に言及しているすべてのメールのコピーの提供――を要求。裁判を起こした。このうち(1)については裁判の中で合意が成立していたことから、BAGは今回の判決で(2)のメールのコピーについて判決を下した。

結論を先に書くと、原告は敗訴した。判決理由で裁判官はまず、メールがGDPR15条3項に定めるコピー請求権の対象に入るかどうかについては判断を下さないと前置きしたうえで、訴状では訴えの対象物を明記しなければならないとした民事訴訟法(ZPO)253条2項1の規定を指摘。原告が訴状に記した、送受信したメールと原告に言及したメールのすべてという表現には対象物の具体性が欠けるとの判断を示した。つまり、仮に裁判所が原告勝訴を言い渡した場合、被告はどのメールのコピーを渡したら良いのかが正確には分からないという問題が生じるということである。

今回の判決から判断すると、原告がもしコピーの対象となるメールを具体的に訴状に記していれば、裁判官はメールが個人データのコピー請求権の対象になるかどうかについて判断を示さなければならなかった。GDPRはEU法であるため、その場合は欧州司法裁判所(ECJ)の判断を仰ぐ必要があった。

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