労働契約の合意解除(Aufhebungsvertrag)で退職する被用者は、労使契約解除日までの一定期間、有給で就労を免除されることがある。就労免除(Freistellung)期間中は仕事をせずに引き続き給与を受け取ることになる。では、従業員の代表機関である事業所委員会(Betriebsrat)のメンバーは就労免除に伴い事業所委員の資格を失うのだろうか。この問題を巡る係争でヘッセン州労働裁判所が昨年12月に決定(訴訟番号:16 TaBVGa 189/20)を下したので、ここで取り上げてみる。
裁判は合弁会社の事業所委員を務める社員が同社を相手取って起こしたもの。原告は2020年3月、被告との間で合意解除を締結した。合意内容は、労使関係の解消日は21年12月末とするが、20年4月1日からは有給で就労を免除するというもの。契約書には会社支給のノートパソコンと、入退出管理カードを20年3月末までに返却することを原告に義務付ける条項もあったが、原告はこれを守らなかった。事業所委員会の会議に参加するために必要だったからである。
会社側は11月5日付の文書で、原告は就労免除により事業所委員の資格を失ったと通告。それと同時に会社支給のパソコンを利用して原告が被告のITシステムにアクセスすることと、入退出管理カードを用いて事業所委の専用ルームに入出することをできなくした。
原告はこれを不当として提訴。2審のヘッセン州労裁で勝訴した。決定理由で裁判官は、事業所委員の資格は労働契約の終了によって消滅するとした事業所体制法(BetrVG)24条3の規定などを指摘。原告の労働契約は21年末まで有効であり、事業所委員の資格は失われていないとの判断を示した。上訴は認めなかった。