従業員の代表機関である事業所委員会(Betriebsrat)は四半期に一度、従業員集会(Betriebsversammulung)を開き、同委の活動について報告しなければならない。これは事業所体制法(BetrVG)43条1項に記された義務である。費用は同法40条1項の規定に基づき雇用主が負担しなければならない。従業員集会は対面方式で行われなければならないが、新型コロナウイルス感染症が流行する現在は、テレビ・電話会議方式に切り替えることが、同法の時限ルール(129条)で認められている。では、対面方式の従業員集会をコロナ下で開く場合も雇用主は費用を負担しなければならないのだろうか。この問題を巡る係争でハム州労働裁判所が10月に決定(訴訟番号:13 TaBVGa 16/20)を下したので、ここで取り上げてみる。
裁判はノルトライン・ヴェストファーレンにある企業の事業所委員会が同社を相手取って起こしたもの。同委は2020年12月末までに10-12月期の従業員集会を社外の開場を借りて開催しようとした。これに対し同社は、感染リスクが高いとして、テレビ会議に変更するよう要求。会場費用の負担を拒否したことから、裁判となった。
原告の事業所委員会は一審のイザーローン労働裁判所で敗訴したものの、二審のハム州労裁で逆転勝訴した。決定理由で同州労裁の裁判官は、原告が◇会場内が過密状態にならないよう集会を3回に分けて開催する◇法令で定められた感染防止措置をすべて取る――計画であることを指摘。被告は会場費用負担を拒否できないとの判断を示した。最高裁の連邦労働裁判所(BAG)への上訴は認めなかった。