部下への監督不行き届きが原因で勤務先に被害をもたらした管理職を解雇することは可能なのだろうか。この問題を巡る係争でデュッセルドルフ州労働裁判所が12月に判決(訴訟番号:6 Sa 420/20)を下したので、ここで取り上げてみる。
裁判は銀行の住宅融資部長が同行を相手取って起こしたもの。原告の部下である住宅融資のコンサルタントPは融資の申請者と共謀し、同申請者が分不相応な額の融資を頭金なしで受けられるようにした。同申請者は信用評価が平均以下であり、銀行に提出した預金残高は偽造されたものだった。
原告はこの融資案件を承認したうえ、取締役会に融資の承認を推薦した。
同行は不正の発覚後、同案件を原告は自らよく調べず承認したとして、2019年9月22日付の文書で即時解雇を通告した。解雇予告期間を設定した通常解雇を行わなかったのは、通常解雇を禁じる規定が労使協定にあるため。
原告は解雇を不当として提訴し、1審と2審のデュッセルドルフ州労裁でともに勝訴した。判決理由で同州労裁の裁判官は、原告は重大な義務違反を犯しており、通常解雇に値すると指摘しながらも、25年以上に及ぶ勤務のなかで一度も問題を起こしていないことを踏まえると、解雇は不当だとの判断を示した。取締役会が融資の承認で過去に同様の過ちを冒していることや、同行の融資審査体制自体が緩いことも原告に有利な判決につながったとしている。