夜間シフト勤務と夜間残業で賃金割増額を区別できるか?

日勤シフト勤務の被用者の夜間残業に支払う割増賃金を、夜間シフト勤務の被用者に支払う割増賃金より高く設定することは平等原則に抵触するのだろうか。この問題を巡る係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が9日の判決(訴訟番号:10 AZR 334/20)で判断を示したので、ここで取り上げてみる。

裁判はハンブルクのビール醸造所に勤務する被用者が同社を相手取って起こしたもの。同社はハンブルク、シュレスヴィヒ・ホルシュタイン両州の労使協定に基づき、夜間労働に対し割増賃金を支給してきた。割増額は夜間シフト勤務の被用者で時給の25%、夜間残業を行う日勤勤務の被用者で50%となっていた。

原告は、定期的な夜間労働が健康にもたらす悪影響は、時々しか行われない夜間労働に比べはるかに大きいとする医学の知見を根拠に業界の夜間割増賃金ルールを批判。夜間シフト勤務に対しても夜間残業と同じ50%の割増を行うよう求めて提訴した。これに対し被告は、夜間残業の割増率を高く設定するのは予期せぬ残業で被用者が受ける極めて大きな負担を相殺するためだとして、夜間シフト勤務との割増率の区別は妥当だと反論した。

原告は一審と二審で敗訴したものの、最終審のBAGは逆転勝訴を言い渡した。判決理由でBAGの裁判官は、夜間シフト勤務と夜間残業の割増賃金に区別を設けることを正当化する根拠はないと指摘。割増賃金に区別を設けた労使協定の取り決めは基本法(憲法)で保障された法の下の平等に反するとして、50%の割増賃金を原告に対し支払うことを被告に命じた。

夜間残業の割増賃金を夜間シフト勤務の割増賃金より高く設定する労使協定は他の業界でも締結されていることから、そうした業界では今回の判決を受けて見直しが行われるとみられる。

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