「クラウドソーサー」と呼ばれる仲介サイトを通して業務(マイクロジョブ)を請け負う就労者を「クラウドワーカー」という。クラウドワーカーはここ数年、急速に増えており、ドイツでは2017年の推定42万3,000人から18年には約560万人に拡大した。コロナ禍で失業したり操短の対象となる被用者が多いことから、現在はさらに増えているもようだ。このクラウドワーカーが独立した事業者に当たるのか、それとも被用者に当たるのかを巡って最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が1日の判決(訴訟番号:9 AZR 102/20)で判断を示したので、今回はこれを取り上げてみる。
裁判はマイクロジョブの仲介プラットホームを運営するクラウドソーサーを相手取ってクラウドワーカーが起こしたもの。原告は小売店とガソリンスタンドで行われているブランド製品のプレゼンテーションを、写真撮影などを通してチェックする業務を請け負っていた。業務を請け負うためにはプラットホーム上にアカウントを設定。業務を請け負った場合は2時間以内に完了させることが義務付けられていた。
原告は11カ月間で計2,978件の業務を請け負った。月平均1,749ユーロを稼いだことから、1件当たりの収入は約6.5ユーロだった。
被告は2018年2月、「今後の争いを避けるために」原告への業務委託を打ち切った。原告はこれを不当と批判。被告との間に雇用関係があることの確認を求めて提訴した。
原告は一審と二審で敗訴したものの、最終審のBAGで逆転勝訴した。判決理由でBAGの裁判官は、業務の内容、時間、場所を外部から指示されて仕事を行う場合は雇用契約がなくても雇用関係が存在するとした民法典(BGB)611a条の規定を指摘したうえで、クラウドワーカーは被用者とみなされることがあり得るとの判断を提示。すべてのクラウドワーカーが被用者に当たるわけではないが、原告については被告の被用者に該当するとの判断を示した。