同僚に対する差別発言は基本法(憲法)で保障された「言論の自由」に当たらず、そうした社員の即時解雇を妥当とする判決に問題はない――。独連邦憲法裁判所(BVerfG)が11月2日の決定(訴訟番号:1 BvR 2727/19)でそんな判断を示したので、今回はこれを取り上げる。
裁判は解雇訴訟で敗訴した被用者が解雇を妥当とした裁判所の判決を不服として起こしたもの。勤務先で事業所委員会(Betriebsrat)の委員を務めていた原告は2017年11月7日に開かれた同委の会合で黒人の同僚委員に対し、猿の擬声語である「ウガ、ウガ」という言葉を投げつけ侮蔑したことから、人種差別を理由に即時解雇を通告された。
原告はこれを受け解雇撤回を求める裁判を起こしたものの、労働裁判所で敗訴が確定したことから、労働裁の判決は言論の自由の侵害に当たるとして違憲訴訟を起こした。
憲法裁はこの裁判で原告の訴えを棄却した。決定理由で裁判官は、同僚の事業所委員に対する原告の発言は基本法で禁じられた人種差別と、同法で保障された平等原則に反すると指摘。人間の尊厳を踏みにじる発言は言論の自由で保障されていないとして、人種差別を理由に原告解雇を妥当とした裁判所の判断は正しいと言い渡した。