「残業容認」で最高裁が判断基準提示

被用者に残業を命じるときは被用者の代表社内代表機関である事業所委員会(Betriebsrat)の了承を得なければならない。労働時間の短縮ないし延長は雇用主と事業所委が共同決定する事柄であることが、事業所体制法(BetrVG)87条1項3で規定されているためである。被用者が行う残業を雇用主が容認している場合も、残業は共同決定の対象となる。では「残業の容認」とは具体的にどういうケースを指すのだろうか。この問題に絡んだ係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が7月の決定(訴訟番号:1 ABR 18/19)で判断を示したので、ここで取り上げてみる。

裁判は物流企業の事業所委員会が同社を相手取って起こしたもの。同社のデジタル勤怠管理システムには2017年3月から5月にかけて、社員2人の労働時間が正規の勤務時間を繰り返し超過していることが記録された。事業所委がこれを問題含みの残業だと批判したところ、雇用主は2人を本来のシフト勤務でなく、誤ってフレックス勤務扱いでシステムに入力したことが原因だと説明。2人をシステム勤務扱いで再入力した。

同社ではまた、17年10月と12月に各1回、開かれた従業員集会の日に、チームリーダーとして勤務する被用者1人の労働時間が正規の勤務時間を超過していたことが明らかになった。

事業所委は両件がともに残業の容認に当たると判断。残業を容認する場合も事業所委員会の了承を得なければならないとするルールに反すると批判するとともに、同委が承認していない違法な残業容認の差し止めを求めて提訴した。

最高裁のBAGはこの訴えを退ける決定を下した。決定理由で裁判官は、残業が発生しているにもかかわらずそれを防ぐ手立てを講じないことが残業容認に当たると指摘。具体的には(1)残業の事実を知りながらそれを防ぐ対策を立てず長期間に渡って容認し続ける(2)多くの社員が毎月、かなりの規模の残業を行い、雇用主がこれを受け入れ残業手当を支給する(3)事業所委員会と共同決定した正規のシフト勤務時間を超えた労働が業務・組織上の理由から頻繁に行われるとともに、これが残業として扱われ残業手当が支給される――を残業容認のケースとして提示した。原告の事業所委員会が問題視した2つの件はこれら3ケースのどれにも該当しないと言い渡した。

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