派遣社員の前に正社員を解雇することは可能か

企業は需要の増減に対応するために通常、派遣社員を活用する。受注が増えたときに派遣社員を採用し、減った時に派遣契約を解除するわけである。では、受注が減った時に派遣社員でなく正社員を解雇することは法的に許容されるのだろうか。この問題を巡る係争でケルン州労働裁判所が9月に判決(訴訟番号:5 Sa 14/20)を下したので、ここで取り上げてみる。

裁判は自動車部品メーカーの正社員が同社を相手取って起こしたもの。同社では正社員106人のほか、派遣社員8人が働いていた。

雇用主は顧客自動車メーカーF社の減産で受注が減ったことから、従業員の削減を決意。原告を含む正社員5人に経営上の理由による整理解雇を2019年6月に通告した。派遣社員については、病気などで休む正社員の代替要員として必要だとして引き続き現場に投入し続けた。

原告は正社員が派遣社員よりも先に解雇されるのは不当だとして提訴。一審のケルン労働裁判所と二審のケルン州労裁でともに勝訴した。ケルン州労裁の裁判官は判決理由でまず、派遣社員であっても産休や病休などの代替要員として投入されている場合は、正社員より先に解雇しなければならないというルールは適用されないとした連邦労働裁判所(BAG、最高裁)の判決を指摘。そのうえで、被告企業では派遣社員6人を正社員の病休などに関わりなく継続的に投入している事実を挙げ、同社の派遣社員は被告の主張と異なり、代替要員に当たらないとの判断を示した。

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