被用者を解雇する前には従業員の社内代表機関である事業所委員会(Betriebsrat)に解雇理由を伝えたうえで同委の意見を聞かなければならない。これは事業所体制法(BetVG)102条1項に記されたルールであり、この手続きに不備があると解雇は無効となる。この条文に絡んだ係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が5月の判決(訴訟番号:2 AZR 678/19)で判断を示したので、ここで取り上げてみる。
裁判は電機メーカーの設計技師が同社を相手取って起こしたもの。同社は原告が重大な義務違反を犯したとして2018年3月7日付の文書で即時解雇と、即時解雇が裁判で認められない場合に備えて10月末付の通常解雇をそれぞれ通告した。解雇通告に先立ち、事業所委員会の意見を聴取。同委は即時解雇と通常解雇を3月5日付の文書でともに了承した。
原告はこれを不当として提訴。事業所委の意見聴取に際して被告が◇労使協定により原告を通常解雇できないこと◇雇用主は即時解雇の理由となる問題行動を認知してから2週間以内に解雇しなければならないとする民法典(BGB)626条2項の規定――を伝えなかったことはBetVG102条1項で義務付けられた解雇理由の説明義務を怠ったものだと訴えた。
一審と二審は原告勝訴を言い渡したものの、最終審のBAGは逆転敗訴判決を下した。判決理由でBAGの裁判官は、労使協定で通常解雇が禁じられていることと、2週間以内の解雇通知期限ルールを事業所委員会に対し説明することは、解雇理由説明の必須要件に当たらないとの判断を示した。