未消化の有給休暇の金銭補償、労使協定の有給にも適用か

未消化の法定年次有給休暇を期限内に消化するよう雇用主が被用者に促さなかった場合、有給休暇の権利は期限後も失効せず、当該被用者には有給休暇を現金に換算して支給(金銭補償)するよう請求する権利が発生する。これは欧州連合(EU)司法裁判所(ECJ)が2018年11月に下し判決であり、ドイツでも拘束力を持つ。では労働組合と雇用者団体が取り決めた労使協定に基づく年次有給休暇にもこの原則は適用されるのであろうか。この問題に絡む係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が5月の判決(訴訟番号:9 AZR 259/19)で判断を示したので、ここで取り上げてみる。

裁判は清掃会社の清掃員が同社を相手取って起こしたもの。原告は2018年4月に5月4日付の解雇を通告されたことから、これを不当としてその取り消しを求める裁判を起こすとともに、2017年の有給休暇が13日分、解雇で消化できなくなったとして金銭補償を請求。これを被告が「有給休暇の取得期限はすでに過ぎており、取得権は失効している」として拒否したため、金銭補償を求める裁判も起こした。

原告は被告企業で週5日、勤務していた。このため法定の年次有給休暇は20日だった。被告企業ではこのほか、労使協定に基づく年次有給休暇を8日(週5日勤務の被用者)、取得することになっている。このため、原告は法定の有給休暇だけでなく、労使協定の有給休暇も消化できなかった。

最高裁のBAGはこの金銭補償をめぐる裁判で、原告勝訴を言い渡した。判決理由で裁判官は、雇用主が被用者に取得を促さなかった場合、有給休暇の権利は期限後も失効せず、金銭補償しなければならないとするEUのルールは、労使協定で特別な取り決めがない限り、労使協定の有給休暇にも適用されるとの判断を示した。

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