企業年金は社員であれば誰でも受給できるわけではない。採用時の年齢や、正社員かどうかなどが受給資格の要件として設定されているケースが多い。この資格要件を巡る係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が9月に判決(訴訟番号:3 AZR 433/19)を下したので、ここで取り上げてみる。
裁判は天然ガスパイプラインの運営会社を相手取って1960年生まれの被用者が起こしたもの。同社では企業年金の支給条件として◇正社員◇雇用開始時点で55歳未満◇企業年金に関する契約を文書で結ぶ――を設定している。有期雇用契約の社員には受給資格がない。
原告は2013年から16年末まで有期社員として働き、17年1月から無期雇用契約の正社員となった。被告企業に企業年金の受給について問い合わせたところ、正社員となった時点で55歳以上になっていたことを理由に受給資格がないとの回答を受け取ったことから、これを不服として提訴した。
一審と二審は原告勝訴を言い渡し、最終審のBAGも同様の判決を下した。判決理由でBAGの裁判官は、有期雇用から無期雇用に中断期間を挟まずに移行したケースでは、有期雇用の開始時点が受給資格を獲得できる採用時の上限年齢(被告では55歳未満)に当たるとの判断を示した。
有期契約社員を企業年金の受給対象から除外することは不当な差別に当たらないかどうかについては判断を提示しなかった。