社内公用語の使用義務、通訳・翻訳での対応はOKか

外資系の企業は進出先の国の社内言語でしばしば問題を抱える。ドイツも例外ではない。この問題に絡む係争でニュルンベルク州労働裁判所が6月に決定(訴訟番号:1 TaBV 33/19)を下したので、今回はこの裁判を取り上げてみる。

裁判はファッションブランド「ザラ」を展開するスペイン企業インディテックスの独法人を相手取ってニュルンベルク支店の事業所委員会が起こしたもの。同支店では2018年12月20日から19年3月3日までの期間、支店内のコミュニケーションにドイツ語を用いることがイタリア人の支店長と事業所委の間で取り決められた。

だが、支店長はドイツ語が不得手であったため、実際には英語を使用。意思疎通では通訳と翻訳を利用した。また、ドイツ語を事業所内の公用語とするとした取り決めが実行不可能だとして更新を拒否した。

事業所委は支店長の行動がドイツ語を支店の公用語とするとした取り決めに違反すると主張。また、英語による意思疎通を貫こうとする支店長の姿勢は、事業所内の秩序と被用者の行動に関する問題は雇用主と事業所委員会が共同で決定するとした事業所体制法(BetVG)87条1項の規定に違反するとして提訴した。

一審は原告敗訴を言い渡し、二審のニュルンベルク州労裁もこれを支持した。決定理由で同州労裁の裁判官は、支店長は通訳と翻訳を通して意思疎通を図っており、ドイツ語を事業所内の公用語にするとした協定への違反はなかったとの判断を示した。また、事業所委員会に共同決定権が発生するのは、雇用主サイドが強制力のあるルールを導入しようとする場合に限られると指摘。支店長は英語を公用語としようとはしておらず、原告事業所委の共同決定権は侵害されていないと言い渡した。

最高裁の連邦労働裁判所(BAG)への上訴は認めなかった。

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