病休延長証明の提出の遅れで最高裁判断

病気で会社を休む場合、社員は医師が発行した労働不能証明書(Arbeitsunfaehigkeitsbescheinigung、通称ゲルベシャイン)を速やかに提出するとともに、いつまで休業するかの見通しを伝えなければならない。これは「祝日および病欠時の給与支払いに関する法律(EntgFG)」5条1項第1文に定められた規則である。同項第4条には、病休期間が延長される場合はゲルベシャインを改めて提出しなければならないと記されている。このルールを巡る係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が5月の判決(2 AZR 619/19)で判断を下したので、ここで取り上げてみる。

裁判は倉庫業務に従事する被用者が勤務先の企業を相手取って起こしたもの。原告は2016年7月以降、椎間板ヘルニアで病休している。雇用主は病休の延長を証明するゲルベシャインの提出が遅れたとして、17年1月から3月にかけて計3回の警告を原告に文書で通知した。それにもかわわらず8月に再び提出が遅れたとして、被告企業は同月末の文書で年末付けの解雇を通告した。

一審と二審は原告勝訴を言い渡した。一方、最終審のBAGは二審判決を破棄して裁判をバーデン・ヴュルテンベルク州労働裁判所フライブルク支部に差し戻した。二審判決には事実認定と、原告と被告の利益を比較して判断する利益衡量に不備があるとしている。

事実認定に関しては、警告の理由となったゲルベシャイン提出の遅れがあったかどうかが定かでないと指摘。この点を明らかにするよう指示した。

二審の裁判官は、病休期間の延長を証明するゲルベシャインの提出の遅れは病休開始時のゲルベシャインの提出の遅れに比べ(1)過失責任の度合いが低い(2)勤務先企業の業務にもたらす悪影響も小さい――との前提に立って原告勝訴判決を下した。

BAGは二審のこの前提判断も不適切だと指摘。(1)の前提に関しては判断の根拠づけが示されていないと批判した。ゲルベシャイン提出の遅れを被告が重過失と主張していることも指摘している。

(2)の判断に対しては、ゲルベシャインの提出を速やかに受けることで、企業は病休社員なしで業務を遂行する計画を立てやすくなることを指摘。この事情は病休開始時も病休延長時も変わらないとの判断を示し、二審の判断を退けた。社員の病休が業務にもたらす影響は個々のケースによって違ってくるとして、利益衡量では原告による病休延長ゲルベシャインの提出遅延が被告の業務に実際に支障をもたらしたかどうかを吟味するよう指示した。

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