事業所委員への社用車支給は違法か

事業所委員会(Betriebsrat)のメンバーは無報酬の名誉職として職務を遂行する。これは事業所体制法(BetrVG)37条1項に記されたルールである。無報酬を義務付けられているということは、雇用主から職務の遂行に必要のない便宜を受けてはならないということを意味する。これに絡んだ係争でベルリン・ブランデンブルク州労働裁判所が2月に判決(訴訟番号:7 Sa 997/19)を下したので、ここで取り上げてみる。

裁判は自動車大手ダイムラーのベルリン拠点に勤務する技術者が同社を相手取って起こしたもの。同技術者は2018年3月までベルリン地区の事業所委員会の委員長を務めた後、同委の一般メンバーとして活動している。

事業所委員長を務めていた期間、原告は私的利用を認められた社用車を被告ダイムラーから支給されていた。金銭に換算すると月に約400ユーロ相当の便宜を受けた計算だ。

事業所委の一般メンバーとなった18年3月以降は同社の規定に基づき、社用車の利用は業務上、必要な場合に限られ、私的利用はできなくなった。

原告はこれを不当として提訴。一審のベルリン労働裁判所で勝訴したものの、二審のベルリン・ブランデンブルク州労裁は逆転敗訴を言い渡した。判決理由で同州労裁の裁判官は、BetrVG37条1項と、事業所委の差別と優遇を共に禁じたBetrVG78条2項の規定を指摘。事業所委のメンバーは私的利用が可能な社用車の支給を受けることができないとの判断を示した。事業所委員長を務めていた時期に受けた便宜も違法だったと判断したわけである。

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