妊娠中および産後4カ月以内(母性保護期間)の被用者を解雇することはできない。これは母性保護法(MuSchG)17条1項に記されたルールであり、雇用主が妊娠の事実を知らずに解雇通告を行った場合は当該被用者が妊娠していることを同通告書の送達後2週間以内に伝えれば無効となる。では、妊娠の事実が労働契約締結時点で明らかになっていなかったものの、勤務開始前に明らかになった場合も解雇は違法なのだろうか。この問題を巡る係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が2月に判決(訴訟番号:2 AZR 498/19)4を下したので、ここで取り上げてみる。
裁判は法律事務所に採用された女性弁護士が同事務所を相手取って起こしたもの。両者は労働契約を2017年12月中旬に締結し、翌18年2月1日の勤務開始を取り決めた。
原告は勤務が始まる前の1月18日付の文書で妊娠の事実を被告に通知した。これを受けて同月末の文書で解雇通告を受けたことから提訴した。法律で禁じられた母性保護期間の被用者の解雇に当たると判断したわけである。
一方、被告の言い分は、原告は勤務開始前であるため、母性保護法に定める解雇禁止規定が適用されないというものだ。勤務開始前の妊婦に同規定が適用されれば、基本法(憲法)で保障された雇用主の職業遂行の自由(営業の自由)が不当に侵害されると訴えた。
一審と二審は原告勝訴を言い渡し、最終審のBAGでも判決は覆らなかった。判決理由でBAGの裁判官は、労働契約の締結とともに労働関係が成立し労使双方に義務が発生すると指摘。母性保護法の解雇禁止規定は同契約の締結直後から効力を持つとの判断を示しした。