被用者は自身の給与がどのような基準で算出されているのか、あるいは同等の業務を行う被用者の給与の開示を雇用主に請求する権利がある。これは報酬透明法(EntgTranspG)10条2項で保障された権利である。では、被用者に近い形で働くフリーランサーにもこの権利はあるのだろうか。この問題に関する係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が6月25日の判決(訴訟番号:8 AZR 145/19)で判断を示したので、ここで取り上げてみる。
裁判は公共放送ZDFで編集者として働くフリーランサーが同局を相手取って起こしたもの。原告は2011年7月に無期限の契約を被告と締結。被告が労働組合と締結した協定に基づいて仕事を行っている。
原告は2018年8月、(1)自身の報酬がどのような基準および手続きで決定されているのか(2)自分と同等の業務を行う者の報酬額――を人事部に質問したところ、原告は被用者でないとの理由で回答を拒否された。
原告はこれを不当として提訴。二審のベルリン・ブランデンブルク州労働裁判所は、原告は報酬透明法10条2項で定義する「被用者」に該当しないとして訴えを棄却した。
一方、最終審のBAGは「雇用および職業における男女の機会均等および平等の取扱いの原則の実施に関する欧州連合(EU)指令(Directive 2006/54/EC)」を踏まえ、国内法(報酬透明法)上の「被用者」の概念は広義に解釈されなければならないと指摘。原告は被用者に該当するとして、自身の報酬がどのような基準および手続きで決定されているかの情報開示請求権があるとの判断を示した。
自分と同等の業務を行う者の報酬額を原告が開示請求できるかについては、二審の事実審理が不十分で判断を下せないとして裁判をベルリン・ブランデンブルク州労裁に差し戻した。