被用者の社内代表機関である事業所委員会(Betriebsrat)は従業員のために様々な活動を行っている。このため企業の文書を閲覧することもある。では各従業員の人事データを見ることもできるのだろうか。この問題を巡る係争でデュッセルドルフ州労働裁判所が6月23日に決定(訴訟番号:3 TaBV 65/19)を下したので、ここで取り上げてみる。
裁判は通信事業者の事業所委員会が同社を相手取って起こしたもの。同社には計12の事業所委員会と、個々の事業所委員会の代表からなる全体事業所委員会(Gesamtbetriebsrat)がある。
雇用主と事業所委が取り決めた全体事業所合意(全体合意)には、事業所委員会の委員長にそれぞれの事業所の電子人事データ閲覧、全体事業所委員会の委員長に同社の全従業員の人事データ閲覧を認める条項が含まれていた。
雇用主はこの取り決めに反して人事データの閲覧を拒否したことから、事業所委側は提訴。人事データを閲覧できなければ、全体合意が順守されているかどうかをチェックできないと訴えた。
一審のデュッセルドルフ労働裁判所はこの訴えを棄却。二審のデュッセルドルフ州労裁でも決定は覆らなかった。決定理由で同州労裁の裁判官は、被用者の人事データの閲覧には当該社員の承認が必要だと指摘。そうした承認なしの閲覧を認めた雇用主と事業所委の取り決めは基本法(憲法)で保障された人格権の侵害に当たると言い渡した。また、人事データを閲覧しなくても全体合意の順守状況をチェックすることは可能だとの判断を示した。
最高裁の連邦労働裁判所(BAG)への抗告は認めなかった。