入国者の一律隔離は違法、欧州内出張に余地

新型コロナウイルスの感染が世界的に流行していることを受けて、ドイツでは国外からの入国者を原則的に隔離する政策が取られてきた。国内での感染拡大を防ぐことが狙いだが、ニーダーザクセン州高等行政裁判所は11日、これが国(連邦)の感染防止法(IfSG)に抵触する違法な措置だとの決定(訴訟番号:13

MN

143/20)を下した。ビジネスマンにとっては活動上の大きな障害がひとつ減ることを意味する。

裁判はスウェーデン南部に別荘を持つニーダーザクセン州民が同州を相手取って起こしたもの。スウェーデンから帰国したところ、新型コロナ感染の症状がなかったにもかかわらず州令に基づいて隔離を命じられたことから、これを不当として提訴した。

隔離命令の根拠となっていたのはIfSG30条と32条の規定だ。30条には感染症の患者だけでなく感染疑いがある人も隔離できることが明記されている。また、32条にはこれらの人の隔離を各州政府が政令などを通して実施することが記されている。ニーダーザクセン州政府はこれらの規定に基づいて国外からの入国者を原則として全員、隔離する政令を策定・布告した。隔離対象とならないのは国境をまたぐ通勤者など一部の人に限られている。

ニーダーザクセン州高等行政裁は今回の決定で、IfSG30条が隔離対象と規定しているのは感染者と感染の疑いがある人だけだと指摘。無症状の感染者が多いという事情を考慮したとしても、世界の人口に占める感染者の割合が極めて低いことを踏まえると、ドイツへの入国者を一律、隔離することは同条の規定に抵触するとの判断を示した。

被告の州政府に対しては、客観的なデータに基づいて新型コロナの危険地域を指定し、その地域からの入国者にのみ一律隔離を命じることは可能だとの判断を示した。入国者に保健当局への申告を義務付けたうえで、聞き取り調査と感染テストを実施し、必要がある場合は隔離措置を取ることも可能だとしている。

同行政裁は抗告を認めておらず、決定はすでに確定している。

帰国者を一律隔離する政令は国内すべての州が採用してきた。州によってルールが異なるという事態が生じないよう連邦政府が政令の見本を作成し、各州政府がこれを採用したためである。

ニーダーザクセン州行政裁の決定を受けて、デュッセルドルフを州都とするノルトライン・ヴェストファーレン州政府はなどすでに、一律隔離規定を棚上げにした。また、連邦内務省は13日、欧州連合(EU)、シェンゲン協定加盟国、英国からの入国者には隔離義務を適用しないようにすることを、各州政府に勧告した。

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