社会的距離の順守状況をカメラで監視、事業所委の同意は必要か

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、ドイツでは現在、最低1.5メートル(ないし2メートル)の社会的距離を保つことが義務付けられている。このルールは小売店や公共交通機関だけでなく、職場にも適用されており、オフィスや工場で原則的に順守しなければならない(社会的距離どうしても保てない場合は、マスクの着用やシールドの設置といった別の予防措置を取らなければならない)。今回は、勤務中の従業員が社会的距離を保っているかどうかを監視カメラでチェックすることの是非をめぐる係争(訴訟番号:2

BVGa

4/20)を取り上げてみる。

裁判は物流企業の事業所委員会(Betriebsrat)が同社を相手取って起こしたもの。同社では従業員監視用のカメラを以前から使用しており、雇用主はこれを利用して新たに、社会的距離(同社では2メートル)の順守状況をチェックしようとした。

従業員の代表機関である事業所委員会はこれが同委の共同決定権の(Mitbestimmungsrechte)の侵害に当たるとして提訴した。

共同決定権は業務の多くの事柄を事業所委が雇用主と共同で決定する権利で、事業所体制法(BetrVG)87条に定められている。同条1項第6規定には技術的な監視手段の導入も共同決定権の対象になると明記されている。

原告の事業所委は監視カメラの導入には以前の時点で同意していたものの、社会的距離の順守状況をチェックするために監視カメラを使用することについては同意していなかった。雇用主はこの新たな目的のための監視を事業所委に打診することなく一方的に開始したことから、同委は共同決定権を侵害されたと批判。差し止め訴訟を起こした。

一審のヴェーゼル労働裁判所は4月24日の決定で、原告の訴えを認める判断を示した。事業所委員会の同意を得ていない今回の措置は共同決定権の侵害に当たるとしている。

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