被用者が長期病休した場合、雇用主は最初の6週間、給与を継続支給(Lohnfortzahlung)しなければならない。これは「祝日および病欠時の給与支払いに関する法律(略:EntgFGないしEFZG)」3条1項第1文に定められたルールである。
では、新型コロナウイルスに感染した疑いがあるため、出勤を控えて自宅隔離となった被用者は、給与の継続支給を受けることができるのだろうか。この問題に絡んだ具体例を日刊紙『フランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)』紙が報じたので、今回はこれを取り上げてみる。
この問題の当事者となったのは、老人ホームに勤務する女性従業員。同従業員の娘の友達が新型コロナに感染したのだ。娘は感染した友人と遊んだ際に横に並んでベンチに座っていたことから、保健所は娘に対し自宅隔離を命じた。また、娘の両親である女性従業員と夫に対しては自宅隔離を勧告した。
夫は勤務先の新型コロナ対策を受けてすでに在宅勤務をしていたので特に問題はなかったが、老人ホームで働く妻は仕事柄、自宅で勤務することはできない。かといって出勤するわけにもいかなかった。老人ホームの入居者は新型コロナに感染すると重症・重篤化して死亡するリスクが高く、同従業員が仕事をすると感染させる恐れがあったためだ。雇用主と相談したうえで、2週間、自宅隔離することした。
同従業員は隔離の期間、有給休暇の取得と労働時間口座の取り崩しで対応した。病休時の給与継続支給を受けることができなかったためである。
FAZ紙がこれについてヘッセン州社会省に問い合わせたところ、次のような回答を得た。
新型コロナ感染者に接触した人には直接的に接触した「第1グレードの接触者」と、第1グレードの接触者を通して間接的に接触した「第2グレードの接触者」がある。今回のケースでは同従業員の娘が第1グレードの接触者に当たり、同従業員は第2グレードの接触者となる。政府機関であるロベルト・コッホ研究所(RKI)は第1グレードの接触者に対し隔離命令を出すよう保健所に勧告しているものの、第2グレードの接触者は命令の勧告が出ていない。
隔離命令の対象となる被用者(第1グレードの接触者)を働かせることはできないため、雇用主は勤務を免除したうえで給与を継続支給しなければならない。ただ、感染防止法の規定に基づき、支給した給与の相殺金を受給できる。
一方、隔離命令の対象とならない被用者(第2グレードの接触者)に対して給与を継続支給する義務はない。自宅隔離するかどうかを被用者は自らの意思で決めることができるためである。