余白一滴

新型コロナワクチンの接種完了者が50%を超えた。1回以上の接種を受けた人が60%を超えていることから、今後も増える見通しだ。だが、新規接種のスピードは急速に鈍化している。アンケート調査によると、未接種者の54%は接種を明確に拒否しており、感染力の極めて高いデルタ株に対する集団免疫獲得に必要な水準(80~85%)は実現が難しい。

国と自治体の危機感は大きく、接種率を高めるための取り組みを開始した。スーパーやイベント会場、接種センターで予約なしで接種できるようにする取り組みはすでに広く行われている。非接種者の行動の自由を接種完了者に比べて制限するという活発に論議されている政策も、無関心ないし懐疑派の市民に間接的に接種を促すものだ。

2日には州の保健相が、12~17歳の接種を本格的に開始することを取り決めた。これは予防接種常任委員会(STIKO)の勧告を事実上、無視するものであり、波紋を呼んでいる。

STIKOは同年齢層について6月、接種のメリットがデメリットを上回る基礎疾患のある子供などについてのみ、接種を勧告した。勧告に法的拘束力はなく、健康な子供でも接種を受けられるものの、接種率は低い。STIKO勧告が足かせになっているとみられる。

STIKOは基本的に、各人の健康に有益か有害かを比較衡量して勧告を決めている。子供にとって安全であることを裏付ける十分なデータがない限り勧告を修正しない意向だ。

一方、政治家は社会全体にとってのメリットとデメリットも考えて政策を決定する。社会全体のデメリットが大きければ、最終的には市民一人ひとりがしわ寄せを受けるという事情を考慮しなければならない。コロナ禍では子供も学習不足や交友制限など健康以外の面でしわ寄せを受けてきた。州の保健相は水ぼうそうに匹敵する強力な感染力を持つデルタ株の流行がもたらし得る甚大な被害を踏まえ、STIKO勧告をあえて無視したのである。

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