余白一滴

自動車は汎用品と化し、差別化のカギはOSとサービスなどハード以外の分野が握ることになる――。ご存じのように、CASE革命に伴う大きな変化として指摘されていることである。部品を集めて組み立てる水平統合が最適の事業モデルとなり、他の業界からの参入の障壁は下がるとされる。

垂直統合性がこれまでよりも弱まるのは確かだろう。ではハードは競争上、二次的な意味しか持たなくなるのだろうか。独自動車メーカーはどうやらそうは考えていないようである。

EV化の流れが定まった後で、電池の内製にいち早く乗り出した独メーカーはVW。ディース社長は18年時点で、巨大な電池市場をみすみすアジア勢に委ねるのは好ましくないとの認識を示していた。同社は中韓メーカーをセルの戦略サプライヤーに選定するとともに、スウェーデンの電池スタートアップ企業ノースボルトと電池を合弁生産することになっている。米クアンタムスケープとは全固体電池の生産施設をドイツに共同設置する方向だ。

子会社ポルシェはVWから電池の供給を受ける一方で、一部の車両に搭載するセルは内製する。すでにセル生産の子会社を合弁の形で設立した。ブルーメ社長は新聞インタビューで、高性能エンジンと同様に高性能な電池セルも自ら手がける必要があると理由を説明している。

メルセデスもポルシェに続く形で、複数の提携先企業とともに巨大セル工場を計8カ所、建設する計画を22日に打ち出した。それだけでなく、高性能モーター製造の英YASAを買収し、EV用パワートレインの垂直統合を強化する方針だ。EVの競争力を決定的に左右する航続距離と充電時間に関わる分野にいては、外部に丸投げできないという判断が透けて見える。

BMWはセルをすべて外部から調達している。ただ、独自の研究開発と試験生産施設を持っており、技術面での主導権を保てるようにしている。

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