余白一滴

エネルギー大手のRWEが建設する洋上風力発電パークから化学大手のBASFが電力の供給を受けるという今週号で紹介した取り組みは、日本の製造業にも大きなヒントを与えるのではなかろうか。製品がライフサイクル全体で排出するCO2の量を引き下げるという製品ライフサイクル評価(LCA)に絡んでのことだ。製造工程でCO2排出量の多い部品は、たとえ優れた性能であっても完成品メーカーの調達網から排除される恐れがある。ドイツではダイムラー、BMW、VWといった自動車メーカーがその姿勢を明確に打ち出している。

日本は電源に占める化石燃料の割合が約75%と極めて高い。原子力をかつての水準に戻すという道筋が見えてこない現状を踏まえると、LCA時代に乗り遅れないためには再生エネ比率を引き上げていく以外に手がないのではなかろうか。

メーカーが電力会社などと組み、自社工場の電源を再生エネへと切り替えていけば、時代の潮流に対応できる。メーカーの規模が小さいのであれば、コンソーシアムを組んで工場専用の再生エネ電源を確保すればよい。

日本は欧州と異なり、遠浅の海が少ない。このため着床式の洋上風力発電の設置海域は少ない。水深の深い海域に適した浮体式の普及には時間がかかる見通しだ。

日本でも議論されている新築住宅への太陽光パネルの設置義務化は解決策のひとつとして有望だろう。個人的には再生エネ比率が高まるまでの暫定的な策として、再生エネを製造業に優先供給することはできないだろうかと思っている。これにより日本製品のCO2排出量が減り、将来の販売先を確保できるようになるため、製造業の海外流出を回避できる。

いずれにせよ、個々の企業の主体的な取り組みと、政財官の枠組み整備を連動させる必要がある。

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