余白一滴

新型コロナウイルス用ワクチンの接種がドイツで始まってほぼ3カ月が経過した。この間、接種キャンペーンが思うように進まなかったり、イスラエルや米国、英国が実績で先行していることを受け、政府に対する批判が高まっている。

市民への接種は当然、早ければ早いほど良い。新規感染を抑制できれば生活を正常化できるわけだし、小売店やサービス事業者も苦境を脱することができる。莫大な政府負担にメドをつけることは財政上、重要だ。

ただ、接種がそれほど大幅に遅れているかと言えば、そうではない。開発・承認から間もないため、生産が差し当たりニーズに追い付かないというのが実情だ。少なくとも欧州では遠からず十分な量を確保できる見通しが立っている。そもそも市民の8.7%が少なくとも1回目の接種を終えているドイツは世界的にみれば恵まれているほうである。100点満点じゃないと許せないというのはヒステリックな反応ではなかろうか。

例えば、日本でも有名なIfo経済研究所のハンスヴェルナー・ジン前所長は、ドイツがワクチンを単独調達せず、EUの共同調達としたことは「根本的な過ち」だと批判している。EUは調達価格をできるだけ引き下げようとしたため交渉が長引き、ワクチンの供給で順番を後に回されたというのが同氏の見方だ。

この見解自体におかしな点はない。ただ、ドイツ政府がEUの共同調達を決めた時点で何も言わなかった人物が、事後的に難癖をつけるのは後出しじゃんけんだと思う。

ドイツが仮に単独で調達を行い、その結果、ワクチン接種で他のEU加盟国を大幅にリードしたとするならば、対独ルサンチマンが噴出しかねないという別の問題があることも忘れてはならないだろう。

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