●成功すれば同社は東欧初の炭素中立のセメント生産者となる
●ANRAV-CCUSでは回収したCO2を黒海の枯渇ガス田に永久貯蔵する
独ハイデルベルク・マテリアルズのブルガリア子会社であるデヴニャ・セメント(Devnya Cement)はこのほど、CCUS(二酸化炭素回収・有効利用・貯留)技術を用いてセメント生産の脱炭素化を目指すプロジェクト「ANRAV-CCUS」の実施に向けて試験事業を開始した。炭素回収率99%を達成するため、複数の回収技術を組み合わせたテストを行う。同プロジェクトが成功すれば、同社は東欧初のカーボンニュートラル(炭素中立)のセメント生産者となる。
セメントの製造過程では原料の石灰石に含まれている二酸化炭素(CO2)が不可避的に放出される。このため、業界が炭素中立を実現するためにはCCUSが必要不可欠とされる。
ANRAV-CCUSは、ブルガリア北東部のデヴニャ工場で回収したCO2をパイプラインで輸送し、黒海の枯渇ガス田に永久貯蔵するものだ。南東欧地域が2030年の環境目標を達成する一つのカギになるとみられている。プロジェクト費用は7億5,000万ユーロに上る見込みで、欧州連合(EU)から1億9,000万ユーロのイノベーション助成を受けている。
南東欧のセメント生産者ではこのほか、クロアチアのネクセ(Nexe)が酸素燃焼によるCO2回収技術の導入を予定しているほか、スロベニアのサロニット・アンホヴォ(Salonit Anhovo)は工場屋上に太陽光発電システムを設置して生産の脱炭素化を進めている。