ポーランド電動乗用車プロジェクトが遅延

●今年末ごろの量産開始予定を25年末に修整

●工場用地は未取得、資金調達の目途も立たず

ポーランド電動乗用車プロジェクト「イゼラ(Izera)」が遅延している。2016年に政府が再工業化の柱の一つとして発表し、今年末頃の量産開始を予定していたが、製造元のエレクトロモビリティ・ポーランド(EMP)は今年に入り、工場着工時期を来年初め、生産開始を25年末に修正した。国内の業界専門家らは、計画の具体化が進んでいないことを理由に、新しいタイムテーブルについても疑念を呈している。

ポーランド政府は17年3月発表のエレクトロモビリティ開発計画で、25年の電動乗用車登録数を100万台に増やす目標を掲げた。これは21~40年の国家エネルギー20カ年計画でも確認されたが、今年4月現在の登録数は4万1,000台弱と、実現には程遠い状況だ。

16年に国有電力大手4社が共同設立したEMP(登録資本1,000万ズロチ)は、20年7月にSUVとハッチバックのプロトタイプを発表した。カトヴィツェ近郊のヤヴォジュノが工場立地に選定され、21年に着工、今年末か来年初めに量産が始まる予定だった。

EMPは今年1月に日程遅延を発表したが、これまでのところ、工場用地の取得も終わっていない。自動車市場調査会社SAMARのヴォイチェフ・ドゥジェヴィエツキ所長は、「分かっているのは浙江吉利控股集団(Geely Holding)がプラットフォームを供給する可能性があることと、伊ピニンファリーナがデザインを担当することのみ」と指摘。「新設される工場のことや就労する従業員についての詳細は不明だ。プラットフォームは中国から調達するとしても、他の部品の調達はどうするのか、実績を積んできた国内サプライヤーをどう活用するのか」といった具体的な情報がないと話す。

欧州エレクトロモビリティ協会(AVERE)の副会長も務めるポーランド代替燃料協会(PSPA)のマツィエイ・マズール理事長は、資金面の問題を指摘する。「外部投資家について様々なうわさや非公式発表があったが、いまだにその実態は分かっていない」としたうえで、「電動乗用車の量産というような大きなプロジェクトを実行に移すには資金の出所を確実にしなければならない。これまで政府が5億ズロチを拠出しているが、準備には40億~60億ズロチが必要だ。これが確保できなければ、発売日は机上の空論」と話している。

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