EUが制裁違反を「犯罪化」する法案で合意、オリガルヒなどの資産押収に本腰

●EU共通ルールの下で対ロ制裁の抜け道をふさぐのが最大の目的

●対象資産を確実に押収しウクライナの復興支援に充てる狙いも

欧州連合(EU)加盟国は9日の司法・内務担当相理事会で、EUが発動した制裁に対する違反行為を「犯罪」として扱う指令案の内容で合意した。EU共通ルールの下で、ウクライナに軍事侵攻したロシアに対する制裁の抜け道をふさぐのが最大の目的。制裁対象となったオリガルヒ(新興財閥)などの資産を確実に押収できる仕組みを整え、ウクライナの復興支援に充てる狙いもある。今後、法制化に向けて欧州議会との交渉に入る。

EUは2022年2月の侵攻開始以来、ロシアに対して10次にわたる制裁パッケージを発動しており、これまでにプーチン政権を支えるオリガルヒを含む個人1,473人と205団体に対し、EU域内の資産凍結や域内への入域禁止などの制裁を科している。ただ、資産の差し押さえなどは加盟国に委ねられており、制裁逃れを刑事罰の対象としている国や、事例ごとに刑事罰または行政罰の対象としている国、すべて行政罰として扱っている国など対応にばらつきがある。

欧州委はこうした現状を踏まえ、22年12月に制裁逃れなどの違反行為をテロや組織犯罪、人身売買、マネーロンダリング(資金洗浄)などと同等の犯罪と位置づける法案を発表した。資産隠匿などの直接的な制裁回避に加え、弁護士などが資産の凍結を妨害したり、銀行が意図的に凍結を怠って制裁逃れを助けることや、禁輸対象品目の輸出入に関わることも犯罪とみなす。

罰則については最も悪質なケースで個人には禁固5年以上、企業には世界売上高の最低5%の制裁金を科す。また、犯罪組織や公務員が関与した場合は、「加重要件」としてより厳格な罰則を科す。

EU議長国スウェーデンのストロマー司法相は「制裁はEUがロシアの侵略に対抗してウクライナを支援するための重要な手段だ。法案が成立すれば、EU全体で制裁違反に対する取り締まりや処罰が容易になる」と強調した。

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