ポーランド司法改革はEU法に「違反」、EU司法裁が最終判断

●欧州委は同国の司法改革がEUの基本理念に反すると再三警告

●ポーランドは新たに裁判官の懲戒制度に関する法律までも導入

欧州連合(EU)司法裁判所は5日、ポーランドの司法改革は法の支配や裁判官の独立といったEUの基本理念に反するとの判断を示した。司法裁は2021年にポーランド政府に対して改革措置の即時停止を命じ、さらに同国が対応を怠ったとして制裁金支払いを命じていたが、改めて裁判官に対する懲戒制度などがEU法に違反するとの見解を示し、訴訟を提起した欧州委員会の主張を全面的に支持した。

ポーランドでは2015年の総選挙で愛国主義的な色彩の強い「法と正義(PiS)」が政権を掌握して以来、違憲判決を出すのが難しくなるよう憲法裁判所の仕組みを変えたり、最高裁判事の人事権を政府が掌握するための法改正を行うなど、政権による司法介入を強める制度改革が進められてきた。欧州委は同国の司法制度改革がEUの基本理念である法の支配に反するとしてくり返し警告した。

しかし、ポーランドは新たに裁判官の懲戒制度に関する法律を導入し、最高裁判所に懲戒処分を管轄する機関を設置した。政府の意向に反する判決を阻止する狙いであることは明白で、これを受けて欧州委は21年3月、ポーランドをEU司法裁に提訴。司法裁は同年7月に懲戒制度の即時停止を命じたが、ポーランドが是正を怠ったとして、10月には命令に従うまで1日につき100万ユーロ(約1億5,000万円)の制裁金を支払うよう命じていた。

欧州委は懲戒制度について、裁判官が政権に不利な判決を出した場合、懲戒機関は「政治活動」や「司法機能の妨害」などの名目で免職や減給などの処分を下す可能性があり、司法や裁判官の独立が損なわれると主張していた。

司法裁は判決で、最高裁に設置された懲戒機関は独立性や公平性の要件を満たしておらず、そうした機関が裁判官の地位や職務遂行に直接影響を及ぼすような裁定を下す制度を容認すれば、司法の独立やEUの法秩序が大きく損なわれる恐れがあると指摘。また、裁判官に所属する団体や政党などの報告を義務づけ、一連の情報をオンラインで公開することを規定した関連法について、個人情報保護や私生活の尊重に対する侵害にあたり、裁判官が一般市民などによって不当に評価を貶められる恐れがあり違法と断じた。

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