R&Dなどの水平的協定適用免除、ガイドライン改正案を採択

●新規則は7月1日付、新ガイドラインはEU官報に掲載され次第発効

●現行の水平ガイドラインは2011年に発効、現状にそぐわず

欧州委員会は1日、事業者間の研究開発(R&D)および専門化に係る水平的協定の一括適用免除規則(Horizontal Block Exemption Regulations=HBERs)と、水平的協定に関するガイドラインの改正案を採択した。新規則は7月1日付、新ガイドラインはEU官報に掲載され次第発効する。

EU機能条約(TFEU)第101条は、第1項で市場競争を制限する恐れがある事業者間の協定を原則として禁止する一方、第3項はその適用除外要件を定めている。市場において同レベルで事業展開する事業者間の水平的協定は、リスクを共有しながらノウハウを蓄積し、コスト削減や投資拡大を実現してイノベーションを促進する手段となり得る。HBERsは、一定の条件を満たすR&D協定および専門化協定が第101条第1項の適用を免除される(競争法に違反しない)ことを定めた規則で、水平ガイドラインはHBERsの解釈と適用について規定している。

現行のHBERsおよび水平ガイドラインは2011年に発効したもので、デジタル経済やグリーン社会への移行といった事象に十分に対応していないとの指摘があった。このため欧州委は19年9月に評価プロセスを開始し、22年3月にHBERsとガイドラインの改正案を発表。利害関係者からの意見募集や各国当局との協議などを経て最終案を採択した。

R&Dや製造などの分野で競争を維持しながら企業が協力しやすい環境を整えるため、今回の改正では全体としてHBERsおよび水平ガイドラインの文言が明確化されている。主な改正点には◇専門化協定に係る一括適用免除規則の適用範囲を拡大し、2者以上の事業者間で締結されるより多くの契約を対象とする◇R&D協定に係る一括適用免除規則を適用するための市場占有率の算出について、より明確かつ柔軟なアプローチを導入し、適用方法に関する指針を定める◇共同購買と購買カルテルを区別するための判断基準を明示◇競争入札における共同入札やコンソーシアムについて、競争法上の考え方を明示――などが含まれる。

事業者間の情報交換・共有に関しては、最新の判例や関連法の執行状況を踏まえてガイドラインを刷新し◇商業的に機微な情報のリスト◇競争制限を構成する可能性のある情報共有の種類◇データプールの潜在的な競争促進効果◇第三者を介した間接的な情報交換(いわゆるハブ・アンド・スポーク型やファシリテーター型)の評価方法◇機微情報の一方的な発信・開示が違法な協調的行動に該当する可能性――などを盛り込んだ。

さらに気候変動への取り組みなど持続可能な目標を追及する水平協定(サステナビリティ協定)や、移動通信分野におけるインフラ共有に関する項目を新たに設け、協定の意義や競争法上の考え方、協定がセーフハーバーに該当して適法と認められるための要件などを明記している。

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