●議会は同国がEUの基本原則を順守していないとくり返し指摘
●EU予算の執行の一時停止措置を現時点で解除できないと表明
欧州議会は1日、欧州連合(EU)の基本的価値を損なわせるハンガリー政府の意図的かつ組織的な試みを非難する決議を採択(賛成442票、反対144票、棄権33票)した。欧州議会はハンガリーがEUの基本原則を順守していないとしてくり返し改善を求めていたが、同国における状況に改善がみられないため、改めて問題点を指摘するとともに、2024年下半期にハンガリーがEU議長国を務めることへの懸念を表明した。
欧州議会は2018年、ハンガリーが民主主義や法の支配、基本的人権の尊重といったEUの基本原則を順守していないとして、閣僚理事会に対し、EU条約(TEU)第7条に基づく対応(議決権の停止など)を求める決議を採択した。22年9月にもハンガリーにおける法の支配が危機的な状況にあるとして、改めてTEU第7条に基づく手続きを進めるよう求める決議を採択している。
今回の決議ではEUの基本原則に加え、新たに議会での十分な議論や国民への説明がないまま採択された法律、憲法に基づく「危険状態」(緊急事態宣言)の乱用、性的マイノリティの権利や表現の自由を損なう公益通報者保護制度の悪用などの懸念事項が指摘された。
また、EUの基本的価値に対するコンプライアンスの欠如や、組織的な腐敗から注意をそらすことを目的としたハンガリー政府の反EUキャンペーンを強く非難。さらに法の支配の原則に違反した加盟国に対し、EU予算の執行を一時停止することができる規則がハンガリーに適用されている問題について、現時点で同措置を解除することはできないと表明した。結束基金から同国に配分される資金のうち63億ユーロの交付が凍結されているほか、新型コロナウイルス禍で打撃を受けた経済の立て直しを支援する復興基金からの拠出についても、総額58億ユーロの補助金交付が見送られている。
輪番制のEU議長国への就任に関しては、ハンガリーがEUの法律と基本的価値を順守していないことから、同国が信頼できるかたちで議長国の任務を果たすことができるか疑問視し、閣僚理に対して「適切な解決策」を見出すよう要請している。デルボ=コーフィールド議員(フランス選出、欧州緑の党・欧州自由同盟)は「TEU第7条の手続き下にある加盟国がEU議長国を務めることができるかどうか、閣僚理は今こそ真剣に問うべきだ」と強調した。