EUと開発企業が「AI協定」策定へ、法整備に先行して対策強化

●技術開発の急速な進展に法整備が間に合わない現状を踏まえ

●チャットGPTの開発企業は欧州からの撤退も示唆

欧州委員会のブルトン委員(域内市場担当)は24日、人工知能(AI)の急速な進化に対応するため、開発企業と協力して「AI協定」の策定を目指す方針を明らかにした。欧州連合(EU)はAIの利用に関する包括的な規制の早期導入を目指しているが、技術開発の急速な進展に法整備が間に合わないため、域内外の企業が自主的に順守するルールを策定してAIがもたらすリスクに対応すると同時に、AIビジネスに対する投資環境を整える。

ブルトン氏は同日、米グーグルのスンダー・ピチャイ最高経営責任者(CEO)との会談後、記者団の取材に応じてAI協定の構想を明らかにした。同氏は「AI規制が実際に適用されるまで待つ余裕はないため、AI開発者と協力して自主的な協定を策定することで合意した。すでに一部で自主規制の動きがあり、法整備を待たずに実行できることも多い」と発言。AFP通信によると、ブルトン氏は具体例として、AIが作成した画像に「AI作成」のラベル付けを義務づける案などを挙げた。

欧州委のベステアー委員(競争政策担当)もピチャイ氏との会談後、「一刻も早くAI規制を導入する必要がある。ただ、AI技術は急速に進化しており、AIに関する普遍的なルールについて今すぐにでも自発的な合意が求められる」とツイッターに投稿。業界側との連携の必要性を強調した。

こうした中、対話型AI「ChatGPT(チャットGPT)」を運営する米新興企業オープンAIのサム・アルトマンCEOは24日、ロイター通信の取材に応じ、EUが法制化の作業を進めている新たなAI規制を順守できなければ、オープンAIは欧州からの撤退を検討する考えを示した。

欧州委は2021年4月、主要国・地域で初となる法的拘束力を伴うAIの包括的な規則案を発表。欧州議会の2つの委員会は5月中旬、チャットGPTをはじめとする生成型AIに対する規制強化策を盛り込んだ修正案を承認した。それによると、生成型AIを提供する企業はコンテンツがAIによって生成されたことを明示するほか、トレーニングに使用した著作物に関する情報を公開することなどが義務づけられる。

アルトマン氏は「EUで検討されているAI規制は厳し過ぎるが、現在も議論が続いており、一部緩和される可能性もあると聞いている」と発言。そのうえで「規制が導入されれば順守するよう努めるが、できることには限度があり、順守できない場合はEU市場での事業を停止する可能性もある」と述べた。

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