第11弾対ロ制裁案で中国企業への制裁検討、第三国経由の迂回取引阻止

●中国企業が制裁リストに掲載されるのは今回が初めて

●ドイツをはじめとする一部の加盟国が合意に慎重な姿勢

欧州連合(EU)加盟国は10日、ブリュッセルで大使級会合を開き、ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアに対する新たな制裁案について協議した。欧米メディアによると、第11弾となる対ロ制裁ではロシアに軍事転用が可能な製品を販売したとして、複数の中国企業が制裁対象のリストに掲載されたもよう。会合ではドイツをはじめとする一部の加盟国が慎重な姿勢を示し、合意に至らなかった。制裁の発動には加盟国による全会一致の承認が必要で、調整は難航する可能性がある。

欧州委員会が加盟国に提示した制裁案は公表されていないが、フォンデアライエン欧州委員長は9日、ウクライナの首都キーウ(キエフ)でゼレンスキー大統領と会談した後の記者会見で、新たな制裁では第三国を経由した迂回取引の取り締まりに重点を置く方針を明らかにした。

ロイター通信によると、欧州委の提案には制裁違反に対する罰則として、違反国への輸出を制限する仕組みの導入が含まれているが、ドイツはこの輸出制限に難色を示しており、他の一部加盟国も、制裁の発動と当該国との外交・通商関係が悪化するリスクの間でバランスを取る必要があると主張した。制裁案にはまた、ロシアが使用するドローン(無人機)の製造に関わるイラン企業も制裁リストに含まれているという。

新たな対ロ制裁をめぐっては、英フィナンシャル・タイムズ(FT)が7日、EUが中国企業への制裁を検討していると報じ、これを受けて欧州委の報道官が検討を進めていることを確認。第三国を通じた制裁逃れを防ぐための措置で、禁輸対象の半導体やドローン、無線システムなどの製品が中国などを経由してロシアに渡るのを阻止するのが狙いと説明した。

FT紙によると、制裁リストには電子部品を扱うキング・パイ・テクノロジーなど中国本土の2社と、シノエレクトロニクスやシグマテクノロジーなど香港企業5社が含まれている。中国企業が制裁リストに掲載されるのは今回が初めてで、中国側の反発を招くのは必至。中国外務省の汪文斌副報道局長は8日の定例会見で、「中ロ間の通商協力は公明正大なものであり、第三者によるいかなる妨害も受けつけない」と述べ、EUが制裁を発動した場合は対抗措置を講じる構えを示した。

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