●冬に向けEU全体で協調的にガスを備蓄してメリットを高める
●ロシア産ガスは共同購入の対象から除外される
欧州委員会は4月25日、欧州連合(EU)域内のエネルギー事業者などが天然ガスを共同購入するため、ガス需要を集約して供給元とマッチングするためのプラットフォーム「アグリゲートEU」の運用を開始した。冬に向けてEU全体で協調的にガスを備蓄し、加盟国間の獲得競争による価格上昇を防ぐとともに、価格交渉力を高めるのが共同購入の狙い。欧州委は夏までに最初の売買契約が結ばれるとの見方を示している。
欧州委は2022年10月、エネルギー価格高騰への対応策として、天然ガスの共同購入や、緊急時における加盟国間のガス供給の融通を柱とする緊急対策案を発表した。ガスの共同購入計画は同月のEU首脳会議で支持され、加盟国に義務付けられたガス備蓄(23年11月以降は自国のガス貯蔵施設の備蓄上限の9割)の少なくとも15%(EU全体で135億立方メートル相当)を共同購入で賄う目標が盛り込まれた。
欧州委によると、これまでにエネルギー事業者のほか、鉄鋼や肥料などエネルギー集約型産業の76社がアグリゲートEUに登録しており、さらに5社程度が近く登録する見通し。登録済みの企業は5月2日までに予定するガス購入量を申告し、プラットフォームを運営する事業者が各社の需要を集約して入札を実施。ガス供給業者からのオファーとマッチングし、各企業はガスの購入や引き渡しに関する条件について供給業者との交渉に入る。欧州委は交渉には関与しない。
共同購入にあたり、大手ガス会社などが「セントラルバイヤー」として、売買契約の交渉や締結に必要な専門知識や信用力を持たない企業の代わりに買い手となったり、「代理業者(Agent on Behalf)」としてLNGターミナルでの受け入れ枠の予約や、船から消費地までの輸送といった補完的サービスを提供する仕組みを導入する。欧州委によると、すでに11社がセントラルバイヤーまたは代理業者の業務を請け負う意向を表明している。
アグリゲートEUを通じた入札は向こう12カ月にわたり、2カ月ごとに実施される予定で、希望する企業は今後も共同購入に参加することができる。EU加盟国のほか、「エネルギーコミュニティ」を構成するウクライナなどのEU加盟候補国(トルコを除く)および潜在的加盟候補国に拠点を置く企業の参加が可能。なお、ロシア産ガスは共同購入の対象から除外される。