東欧・コーカサス地域のIT競争力ランキング、エストニアが1位に

●同国のトップは2年連続、2位はリトアニア、3位はポーランド

●戦時下のウクライナは14位から12位にランクアップ

東欧・コーカサス地域の23カ国を対象としたIT業界調査「フューチャー・オブ・IT」の競争力ランキングで、エストニアが2年連続のトップに輝いた。2位はリトアニア、3位はポーランドだった。

ラトビアとハンガリーは昨年から4ランク上昇し、それぞれ4位と5位につけた。一方、チェコは3位から7位に転落した。

下位をみると、ボスニア・ヘルツェゴビナが引き続きワースト1となった。これにアゼルバイジャンとアルバニアが続いた。

■ウクライナの底力

ウクライナは戦時にもかかわらず強さを示し、昨年の14位から12位にランクアップした。調査の主執筆者の一人であるクレイグ・タープ氏は「ウクライナのIT業界は同国の強靭さを象徴するシンボルとなっている。昨年の輸出高は80億米ドルに上り、貴重な外資収入を国にもたらした。IT企業は停電の間も高品質の製品を供給。世界市場での地盤を拡大し、新たな顧客を獲得した企業も多い」と評価した。

ウクライナのミハイロ・フェドロフ副首相兼デジタル転換相によると、同国では今月、防衛技術クラスタが組織される。軍事分野が今後の同国IT業界の一つのトレンドとなりそうだ。

■バランス力のエストニア

エストニアは、全部で4つあるカテゴリー別評価で1位となったのは「経済的インパクト」のみだった。他のカテゴリーをみると、「人材」ではポーランド、「ITインフラ」ではルーマニア、「事業環境」ではチェコにトップを譲ったが、いずれでも高得点を取るバランスの良さが強みとなった。カテゴリー評価の構成指標となった「国際学習到達度(PISA)」、「IT労働者・開発者の人数(人口比)」で最高点を記録。ユニコーン企業もすでに10社を輩出している。

タープ氏は、「政府、起業家、投資家、大学の提携を可能にする協業的エコシステム」を同国の特長と評価する。電子政府でも世界をリードしており、これが起業・納税手続きの簡易化といった「ビジネスのしやすさ」につながっている。

■リトアニア、1位も射程内

リトアニアはじりじりとエストニアに迫り、トップを争える力をつけてきている。起業もエストニアに劣らず盛んで、フィンテック分野への集中が実を結びはじめた。同国投資庁によると、22年のフィンテック企業数は262社、雇用数は前年比19%増の7,000人に上った。

■IT業界の21年輸出額は4,680億ユーロに

中東欧・コーカサス地方のIT業界売上高は21年に1兆ユーロを突破した。うち、4,680億ユーロが輸出で、国際収支の改善に貢献している。調査対象23カ国の業界従事者数は合計224万人と、労働人口の3%弱に上る。人手不足が問題となっているが、ITを専攻する学生は増加傾向にあり、21年は43万5,000人強に達した。同年の卒業生も8万2,000人となり、後継者の育成が進んでいるとみてよい。

賃金水準はリトアニアの2,860ユーロ、エストニアの2,804ユーロからジョージアの533ユーロまでと差が大きいが、いずれも国内の平均賃金を大きく上回っている。その代わり、IT労働者の1人当たり付加価値は地域平均で8万ユーロ強、エストニアでは13万2,000ユーロ前後と、非常に大きい。

「フューチャー・オブ・IT」は東欧情報サイト「エマージング・ヨーロッパ」が毎年実施している調査で、今回が3回目。対象国は、ブルガリア、クロアチア、チェコ、ハンガリー、ポーランド、ルーマニア、スロバキア、スロベニア、アルメニア、アゼルバイジャン、ベラルーシ、ジョージア、モルドバ、ウクライナ、エストニア、ラトビア、リトアニア、アルバニア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、コソボ、モンテネグロ、北マケドニア、セルビアの23カ国で、45の構成指標を基に分析している。

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