●デジタル分野の発展には3国それぞれに特徴が
●テック大手の競争激化のなか、デジタル分野での重要性を維持
バルト3国はここ数年、デジタル分野で大きな発展を遂げてきた。総人口は600万人強に過ぎないが、それぞれが小国ならではの柔軟性を活かしてイノベーションを促進する環境を整えたことが背景にある。テクノロジーの世界的大手の間で競争が激化するなかでも、バルト3国はデジタル分野における重要性を維持している。
リトアニアは技術インフラの整備に多額の資金を投下した。その結果、情報技術(IT)を活用して金融サービスの利便性を高めるフィンテック部門を中心に、数多くのスタートアップ企業やテクノロジー企業が進出した。投資誘致機関のインベスト・リトアニアによると、過去5年間で同国のフィンテック企業数は3倍に増加し、従事者数は3,500人を超えている。
もう一つの強みは、IT人材の育成に向けて、科学・技術・工学・数学(STEM科目)に力を入れたことだ。その努力がフィンテック部門の反映に貢献した。
「スタートアップ・ビザ」の導入で外国起業家がリトアニアで事業を立ち上げることを容易にしたり、エンジェル投資家と新興企業をつなぐ「ビジネス・エンジェルズ・ネットワーク」の立ち上げで外国からの資金調達環境を整えたりしたことも無視できない。事業の立ち上げ・運営にかかる費用が比較的小さいのも業界を後押ししている。
最近ではサイバーセキュリティ関連企業も増加しており、インベスト・リトアニアの集計によると、これまでの設立数は100社を超える。雇用数は合わせて3,000人強という。
エストニアは、他国に先駆けて新しいデジタル市場を創設した。ブロックチェーン技術を活用して「eレジデンス(国外居住者がエストニアで起業できる制度)」や「Xロード(省庁・機関をまたがる情報交換基盤)」、「デジタル身分証明書」などを生み出し、保健、金融、ビジネスに関連するサービスをオンラインで受けられるようにした。
ラトビアはスタートアップ企業の育成・支援するエコシステムの構築に注力した。「スタートアップ法」や「スタートアップ・ビザ」制度の整備で、多くの起業家をひきつけている。ベンチャーキャピタル(VC)による投資も多く、なかには同国に拠点を設けたVCもある。
ラトビアが強いのは電子商取引(EC)分野で、過去10年で25%成長した。北欧、南欧、西欧、ユーラシア大陸内部の中間に位置し、欧州連合(EU)加盟国である地の利が長所だ。独ザランドや米アマゾンといった大手が進出したほか、政府の支援措置が奏功した国内企業「クルペス.lv」、「220.lv」などが有力企業として名を連ねている。