欧州委員会は17日、EU域外の第3国の政府から多額の補助金を受けた企業に対し、EU域内での買収や投資、公共調達市場への参入を規制する方針を発表した。EU市場で影響力を強める中国などを念頭に、新型コロナウイルス感染拡大の影響で厳しい経営を迫られている域内の企業が、国家補助金に支えられた外国企業に買収されるのを防ぐ狙いがある。9月23日まで意見募集を行い、2021年中の法制化を目指す。
欧州委は「外国補助金に関する競争の公平性」と題する白書で、EU加盟国による特定企業への資金支援はEU国家補助規定で厳しく制限されているのに対し、現状では第3国の政府や公的機関から補助金を受けた企業に対するEUの規制や国際的ルールは存在しないと指摘。こうした「規制上のギャップ」がEU市場の歪曲を招いているとして是正措置の導入を提案している。
具体的には第3国から3年間で20万ユーロ以上の補助金を受けた企業を対象に、域内での買収や投資に際して欧州委への通知を義務付ける。欧州委や加盟国の規制当局が外国補助金によって「市場の競争が歪められている」と判断した場合、買収や投資計画の見直しを求め、従わない場合は取引を阻止できるようにする。
さらに公共調達市場で公正な競争を確保するため、第3国から補助金を受けている企業が入札に参加する際、管轄する公共機関への通知を義務付ける。調達機関または監督機関が外国補助金によって調達プロセスが歪められていると認定した場合、当該企業を入札から排除することができる。
白書は「経済がグローバル化する中、外国政府による補助金がEU市場で公正な競争を歪めており、域内企業の買収や投資に悪影響を及ぼしている」と警告。欧州委のベステア委員(競争政策担当)は「EUの繁栄を支える単一市場は公正な競争が確保された状態でのみ機能する。第3国の補助金が競争を歪めるのであれば対抗策を講じ、市場を守らなければならない」と強調した。