欧州委がコロナワクチンの戦略発表、27億ユーロ投じて事前購入

欧州委員会は17日、新型コロナウイルス感染症の収束に向けてワクチンの開発・生産を加速させ、迅速な供給を実現するための「EU ワクチン戦略」を発表した。EU市民が確実にワクチンを入手できるよう、最大27億ユーロを投じて有望なワクチンを事前購入することを柱とする内容。このほか規制を柔軟に運用してワクチンの承認手続きを迅速化することや、各国が連携して世界中の人々にワクチンが届く仕組みづくりを進めることなどを提案している。

ワクチン戦略は安全で有効なワクチンの開発・生産を促進し、EU加盟国が必要な量を確実に確保できるようにするとともに、発展途上国にも手頃な価格のワクチンを公平に供給する仕組みを構築することを目的としている。欧州委のフォンデアライエン委員長は声明で「新型コロナウイルスに打ち勝つためのワクチン開発を促し、欧州および世界各国に供給できるようにしなければならない。EUは世界中の人々にワクチンが行き渡るよう全力を尽くす」と強調した。

計画によると、総額27億ユーロの緊急支援基金(Emergency Support Instrument)を活用し、ワクチン開発を進めている製薬会社と契約を結んで事前購入を進める。具体的には科学的アプローチや技術面の評価、量産化や供給開始のメド、コスト、信頼性などの基準をもとに有望なワクチンを選定し、開発を支援。見返りとして一定量のワクチンを優先的に購入する権利を得る仕組み。投入した資金は手付金と位置付け、加盟国が実際にワクチンを購入する際の支払いに充当する。

一方、欧州委はワクチンの早期実用化に向け、欧州医薬品庁(EMA)や加盟国の薬事当局に対し既存の規制を柔軟に運用するよう求めた。承認手続きの迅速化に加え、ラベルやパッケージに関する規制の緩和、さらに遺伝子組み換え製剤に関する規制を一時的に緩和し、組み換え技術を用いた新型コロナワクチンや治療薬の臨床試験を加速させることなどを提案している。

途上国を含む全ての国にワクチンを供給する仕組みづくりに関しては、EUの主導で5月初めに開催した資金集めのためのイベント「コロナウイルス・グローバル・レスポンス」を通じ、5月末までに98億ユーロを調達した。欧州委はワクチン戦略を推進するため、6月27日にオンラインサミットを開催し、世界各国の首脳や非政府組織に協力を呼びかける。

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