EU離脱に伴う税関検査、英政府が完全実施を先送り

英政府は12日、EU離脱に伴う税関検査の実施を先送りする意向を表明した。当初は「移行期間」終了直後の2021年1月から完全な形で実施する予定だったが、新型コロナ危機で苦境にある国内企業が通関手続きを迫られることで、さらに厳しい状況にさらされるとして、段階的な実施に切り替える。

英国とEUは移行期間内に自由貿易協定(FTA)で合意し、双方の貿易が引き続き関税ゼロになったとしても、簡素的な税関検査と税関申告は必要だ。関税復活の場合は、通関手続きが複雑となる。

英政府は2月、EUからの輸入品について、21年1月1日から他の国の物品と同様の税関検査を実施すると発表していた。しかし、ゴーブ国務相は完全実施を7月まで見送ると発表。1月から6月にかけて段階的に導入する方針を示した。

具体的には、7月までは輸入業者に記録を保管することを求めた上で、税関申告は免除する。EUとのFTA交渉が決裂するなどして関税が復活する場合も、関税支払いは税関申告後まで猶予される。

英国ではEU離脱によって税関検査が復活すると、国内企業の税関申告が年間で2億回増えると見込まれている。新たな税関施設の整備、人員増強も必要となる。しかし、政府の対応が遅れており、とりわけ税関検査がどのような形で実施されるか不透明なことから、経済界では不安感が広がっている。政府は今回の決定について、新型コロナ危機で揺れている国内企業に配慮し、新たな通関制度への対応に6カ月の準備期間を与えるのが目的と説明しているが、政府の準備が遅れていることも背景にあるもようだ。

英政府はEUも英国からの輸入品の税関検査について、同様の先送り措置を講じることを期待しているが、専門家の間ではEU側は準備が進んでおり、移行期間終了と同時に完全な税関検査を実施するとの見方が出ている。

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